研究紹介 Research
「表面・界面を創る技術(精密加工)と 表面・界面を使う技術(トライボロジー)」
機械システムを構成する機械部品,機械要素には機械システムに求められる機能を達成するための形状が与えられています.多くの場合,素形材からその形が作られ,この時,新たに表面が創り出されます.ここで創られた表面は他の部品の表面と界面を創り出します.ここで,界面が相対運動する場合(滑り,転がりなど),摺動面となり摩擦や摩耗が生じます.したがって,機械システムを創り,運転することには,新たに表面・界面を創り出し,それを使うことを多分に含んでいます.
機械システムの可動部が信頼性をもって滑らかに運動し続けるには,滑らかな表面を精度良く,かつ損傷を残すことなく創り出す必要があります.形状を創製する技術の中で,‟切削”,‟研削”,‟レーザ加工”,‟放電加工”など除去加工は「精密加工」です.また,低摩擦で摩耗することなく滑り(転がり)続ける技術が必要となります.「トライボロジー」はこのような相対運動する2表面に生じる摩擦・摩耗,および潤滑に関する学問分野です.研究室では,高精度・高信頼性な機械システムを実現するために,「表面を創る技術 - 精密加工」と「表面を使う技術 - トライボロジー」の両面から研究を進めています.本研究室はこの2つを同時に研究フィールドとする数少ない研究室です.
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研究テーマの例
「超短パルスレーザを用いてこれまでにない,鋭利で強い切削工具を創りだす」 「次世代航空機,次世代自動車に使われる新しい材料に使われる新しい材料に対する加工技術の開発」 「ピッチング損傷を抑止する表面性状制御技術」
市販の切削工具には工具刃先にミクロンオーダーの凹凸や欠けが存在します.この凹凸や欠けは切削加工時に製品表面に転写され表面粗さを悪化させると同時に工具欠損の原因となります.
私たちの研究室で開発した超短パルスレーザを用いた工具成型法であるPLG(Pulse Laser Grinding)
を用いると非常に鋭利で凹凸のない刃先を創りだすことができます.これを使用すると,現在研削(砥粒加工)で表面創成している硬質脆性材料を,PLGで鋭利に成型した切れ味の良いダイヤモンド工具で切削して成型することが可能になります.
航空機のジェットエンジンに使われるニッケル耐熱合金は非常に加工が難しい材料です.そのため従来は非常に低速で切削加工を行いますが,研究室で開発した技術を用いることによって従来の5倍程度の速度で加工することが可能になりました.
サブミクロンの厚さの油膜で浮いて運転している転がり軸受は,材料表面にミクロンオーダーの突起があった場合にその部分が接触し,表面起点型の損傷原因を作り出します.そこで私たちの研究室では軸受に従来と同程度の凹凸があっても接触確率を低減できるような加工法を開発し,寿命を向上させることに成功しました.
このように,潤滑性能を向上させる表面の仕上げ加工を探索する研究を行っています.
現在参画している研究プロジェクト
これまでに参画した研究プロジェクト
- 愛知県 重点研究プロジェクト(I期) 「低環境負荷型次世代ナノ・マイクロ加工技術の開発プロジェクト」 詳細はこちら
- 愛知県 重点研究プロジェクト(II期) 「航空機製造工程の革新によるコスト低減と機体の軽量化・高性能化」 詳細はこちら
- 愛知県 重点研究プロジェクト(III期) 「高性能モータコア・変速ギア製造のための革新的生産技術開発」 詳細はこちら 詳細はこちら メディアでの報道
- 愛知県 重点研究プロジェクト(III期) 「次世代航空機/自動車部品用高機能材料の高精度・高能率加工」 詳細はこちら
大村知事に説明を行う糸魚川教授
近未来自動車技術開発プロジェクトの研究テーマである「高性能モータコア・変速ギア製造のための革新的生産技術開発」について、名古屋工業大学の糸魚川教授から説明を受けています。知の拠点あいちにて。 pic.twitter.com/nOO7cmhI0k
— 大村秀章 (@ohmura_hideaki) October 24, 2019
企業との共同研究
- 例年15社から20社の企業様と共同研究を行っています. おもな共同研究先:自動車メーカ,自動車部品メーカ,重工メーカ,工作機械メーカ,工具メーカなど
学会発表
- 国際会議・国内会議を合わせ毎年多くの学会で研究成果を報告しています. 2023年度の学会発表一覧 2022年度の学会発表一覧 2021年度の学会発表一覧 2020年度の学会発表一覧 2019年度の学会発表一覧 2018年度の学会発表一覧